非業の最期

擂りたての山葵が静かに滴り落ちた。
ぴくぴくと身を震わせる白身魚が、
寝る時でさえ閉じることのできないその義眼のような目で、
醤油の表面に映る自分の姿を諦観していた。


敏捷な包丁捌きで細工された白身色の起伏が、
幾何学的な模様を描いていた。


魚は電動髭剃りの際剃り刃のような細い歯を覗かせながら、
冷たい口元を暫らく痙攣させていたが、
やがて肺のない呼吸が途絶えてしまった。


そして、その非業の最期を見届けた僕は、
箸を取って食べ始めた。


活け作り
三千円