2004-01-25 非業の最期 擂りたての山葵が静かに滴り落ちた。 ぴくぴくと身を震わせる白身魚が、 寝る時でさえ閉じることのできないその義眼のような目で、 醤油の表面に映る自分の姿を諦観していた。 敏捷な包丁捌きで細工された白身色の起伏が、 幾何学的な模様を描いていた。 魚は電動髭剃りの際剃り刃のような細い歯を覗かせながら、 冷たい口元を暫らく痙攣させていたが、 やがて肺のない呼吸が途絶えてしまった。 そして、その非業の最期を見届けた僕は、 箸を取って食べ始めた。 活け作り 三千円