紺色の緊張感

警棒を持った警官が十人ぐらい、
隣のパチンコ屋の前に立って
目をきょろきょろさせていた。


パトカーが8台ぐらい止まっていて、
中にも警官が待機していたらしい。


「パチンコ屋の中で何があったんだろう?」


「なぜ警官が道路の方を見ているんだろう?」


「誰かが現れるのを待っているんだろう?」


「喧嘩でもあったんだろう?」


僕がこうやって野次馬に加わって耳を澄ましていると、
知らない人同士がこのように、
様々な質問を投げ合っていた。


家に帰るのにパチンコ屋の前を通って行きたいと、
怯えた表情で目を潤ませる少女がいれば、
紺色の緊張感に包まれていたパチンコ屋を物ともせず、
のこのこと通りすがる人もいた。


コンビニの従業員もそこに立っていた。


中でも特に目立ったのは、
せんべいをぼりぼり食べながらくずを散らす
三人のスキンヘッドのお兄さんだった。



しばらくすると、
何か無言の合図を察知したかのように、
警官が一斉にパトカーに戻り、
すぐさまその場を去って行った。


野次馬もやがて分散し、
コンビニの前の角が静まり返った。


多量のパンくずを目がけて飛び降りた数羽の鳩だけが、
こだまが返るように、
クークーと野次馬の余韻を長引かせた。